HEAVY METALの世界へようこそ!

 HEAVY METAL(へヴィ・メタル 以下HMと略)について

 残念ながら我国においてはへヴィ・メタルという言葉に対してのネガティヴなイメージが定着しているのが現状である。つまりへヴィ・メタル=ヘビメタ、という間違った固定観念が形成されている。その固定観念がもたらすイメージは騒音であったり、奇抜なルックスであったりする。かくいう私も最初はHMに対して、ウルサイだけの音楽と決め付けていたし、それ故に聴こうとしなかった。しかしながら、HMとは非常にメロディアスな音楽であり、高い演奏力を求められる音楽である。もっとも初心者がいきなりデス・メタルを聴いたところで、いかに高度な演奏を披露していたとしても騒音にしか聞こえないかも知れないが・・・。また、HMにも粗悪品はあるから、「聴いてみたけどやっぱりつまらん」という結果に終ってしまう可能性もある。また、どんなに良い作品であっても、ピンと来ない場合もあるかもしれないが、最終的にはこれは本人の好みの問題であるし、HMに限ったことではない。良い音楽に出会う為には多少なりとも努力すること(聴く機会を得ること・聴くこと・情報収集すること)が必要となってくる。

 15年前、洋楽ポップスを聴いていた頃、私にとってHMとはヘビメタだった。しかしHELLOWEENを聴いて、ツインリード(ハーモニーを付けながら1つのソロを奏でる2本のギターのこと)が生み出すメロディや音色の美しさと劇的な曲構成に一瞬にして魅せられてしまった。それ以来、HMは私の音楽生活の大半を占める存在となった。良質の音楽を求めている方であればこそ、聴かず嫌いはもったいない。

 ここでは、HM入門編として、名盤と謳われる作品の中から個人的に10枚をセレクトしてみた。いずれも演奏力、楽曲の完成度・アレンジに秀でたアーティスト達の作品であり、全て国内盤でリリースされているので手に入りやすいと思われる。これを読んだ方がHMに興味を持ち、素晴らしい作品に出会えるきっかけになれば幸いである。



HELLOWEEN 
「Keeper Of The Seven Keys partU」

(1)Invitation
(2)Eagle Fly Free
(3)You Always Walk Alone
(4)Rise And Fall
(5)Dr.Stein
(6)We Got The Right
(7)Save Us
(8)March Of Time
(9)I Want Out
(10)Keeper Of The Seven Keys
1988年作 Produced by Tommy Newton、Tommy Hansen
from GERMANY
 昂揚感を誘う雄大なイントロ(1)から名曲(2)へと繋がる展開はいつ聴いてもゾクゾクする。疾走するツイン・リードの美旋律、まるでアニメのテーマ・ソングのようなノリに親しみ易い歌メロ、そして劇的な展開が渦巻く捨て曲無しの作品で、後に多くのフォロワーを産むこととなる名盤中の名盤。乱暴な言い方だが、HMはサウンドはへヴィでもメロディ自体は実にキャッチーでポップなのだ。本作を聴けばHMが音楽の三要素であるリズム/メロディ/ハーモニーを大切にしている音楽であることが実感できるハズ。逸材と言われたマイケル・キスクの伸びやかなハイトーン・ヴォーカルとカイ・ハンセンとマイケル・ヴァィカートによるツイン・リードの調べを堪能して欲しい。大作(10)はマイケル・ヴァィカートの才能を当時の全HMファンに知らしめた、まさにHELLOWEENサウンドの美学の結晶とも言うべき超名曲。


IRON MAIDEN 
「Seventh Son Of A Seventh Son」

(1)Moonchild
(2)Infinite Dreams
(3)Can I Play With Madness
(4)The Evil That Men Do
(5)Seventh Son Of A Seventh Son
(6)The Prophecy
(7)The Clairvoyant
(8)Only The Good Die Yong
1988年作 Produced by Martin Birch
from ENGLAND
 HMのパイオニア的作品「Iron Maiden」でデヴューして以来、優れたHMを世に出し続けているIRON MAIDENの7作目で超常能力を持つ人物のストーリーを描くコンセプト・アルバム。ギター、ベース、ドラムが疾走するリフを刻み、その上をブルース・ディッキンソンの声量溢れる素晴らしいヴォーカルが乗る。スティーヴ・ハリスによるバキバキと唸る激しいベース・ラインにも注目。彼らの楽曲・サウンドにおいて独特のノリと心地良さを作り出しているのは彼のベース・プレイに依るところが多い。大作主義や起伏の激しい曲展開など、プログレッシヴ・ロックからの影響を感じさせる部分もあるが難解さは無く、むしろ全編に渡って繰り広げられるクリアなツインリード、曲をより一層ドラマティックに盛り上げるために導入されたシンセサイザー、意外にキャッチーなヴォーカル・ラインと、耳を惹くのは実に心地良いサウンド。









QUEENSRYCHE 
「Operation:mindcrime」

(1)I Remember Now
(2)Anarchy-X
(3)Revolution Calling
(4)Operation:mindcrime
(5)Speak
(6)Spreading The Disease
(7)The Mission
(8)Suite Sister Mary
(9)The Needle Les
(10)Electric Requiem
(11)Breaking The Silence
(12)I Don't Believe In Love
(13)Waiting For 22
(14)My Empty Room
(15)Eyes Of A Stranger
1989年作 Produced by Peter Collins
from AMERICA
 欺瞞や不正に満ちた世界を変えるためにドクター・Xの革命運動に参加したニッキーは組織によって洗脳され、命令によって殺人を行なわされるようになる。革命の希望は砕かれ、苦悩するニッキーだがもう後には戻れない。薬漬けになり、愛する女性も殺されて、使われるだけ使われて組織に捨てられたニッキーは精神病院に収容される・・・。
 本作は主人公ニッキーの回想という形で進行するコンセプト・アルバムである。一曲一曲の完成度の高さ、アルバム全体の流れ、根底にあるストーリー、と全てが最高レヴェルで、聴いているとまるで映像が迫って来るかのような感覚に陥る。楽曲自体はコンパクトにまとめられており、緊張感溢れながらも歌メロは実はキャッチー。(8)は女性コーラスを導入した大作でオペラ歌手のパメラ・ムーアがシスター・メアリー役で参加、ジェフ・テイトとの絡みはゾクゾクする。苦悩と葛藤に満ちたニッキーの感情をを見事に表現しきっているジェフ・テイトのヴォーカルは本当に感動的である。緊迫した中にも官能的でさえあるクリス・デガーモのギター・ワークも素晴らしい! 緻密なサウンド・プロダクションは是非ヘッドフォンで味わって欲しい。不朽の名作。



GAMMA RAY 
「Heading For Tomorrow」

(1)Welcome
(2)Lust For Life
(3)Heaven Can Wait
(4)Space Eater
(5)Money
(6)The Silence
(7)Hold Your Ground
(8)Free Time
(9)Heading For Tomorrow
(10)Look At Yourself
(11)Mr.Outlaw
1990年作 Produced by Kai Hansen
from GERMANY







 名作「Keeper Of The Seven Keys partU」発表後、僅か3ヶ月でカイ・ハンセンはHELOWEENを脱退してしまう。その後、カイは元TYRAN PACEのヴォーカリスト、ラルフ・シーパースと共にニュー・プロジェクトを始動。それがこのGAMMA RAYである。所謂HELLOWEENタイプの曲もあるが本作はむしろ、70年代のロックのスピリッツをベースにHMの様々な可能性を追求しているという点で、バンド体制となってからの次作「Sigh No More」以降のピュアなパワー・メタル路線とは大いに異なる。(5)や壮大なパワー・バラッド(6)でのユニークでオペラティックなコーラス・ワークや意表を突く曲展開は実に刺激的であり、壮大なコーラスと強靭なリフが絡み合い、複雑な展開で独特の美とうねりを生みだしているプログレッシヴな大作(9)はまさに圧巻!! どの曲も隙がなくスリリングでセンス溢れるアレンジが光る、カイ・ハンセンの作曲者としての、ギター・リストとしての双方の才能が凝縮された傑作。ちなみに(10)はURIAH HEEPのカヴァー。ボーナス・トラックを追加収録し、アートワークを新たにしたデジタル・リマスター盤(下)も2002年にリリースされた。

JUDAS PRIEST 
「Painkiller」

(1)Painkiller
(2)Hell Patrol
(3)All Guns Blazing
(4)Leather Rebel
(5)Metal Meltdown
(6)Nightcrawler
(7)Between The Hammer & The Anvil
(8)A Touch Of Evil
(9)Battle Hymn
(10)One Shot At Glory
1990年作 Produced by Chris Tsangarides & Judas Priest
from ENGLAND
 強烈なドラムのビートで幕を明け、鋭いギターのリフが切り込んでくると空気が一変する。次いでロブ・ハルフォードによる、聴き手の脳髄を直撃するかのような凄まじい超高音ヴォイスが炸裂するという、衝撃的なタイトル・チューンを筆頭に「これぞHM!」というべき楽曲が次々と繰り出される。K.K.ダウニングとグレン・ティプトンによる強靭なギターはひたすら攻撃的で、唸りながらも叙情的なフレーズを刻んでいく。アルバム前半はひたすらアグレッシヴに、そして後半は構成力でじっくりと聴かせる。ロブのヴォーカルの旨さをじっくりと味わえる、ダークかつ官能的な美さえ感じさせる(8)や、(10)の後半でのツインリードの展開に見られる構成力は見事としか言いようがない。HMの教科書的作品の一つ。今回紹介した中では最もへヴィな作品かな・・・。

DREAM THEATER 
「Images And Words」

(1)Pull Me Under
(2)Another Day
(3)Take The Time
(4)Surrounded
(5)Metropolis- part1 “The Miracle And The Sleeper”
(6)Under A Glass Moon
(7)Wait For Sleep
(8)Learning To Live
1992年作 Produced by David Prater
from AMERICA
 言うなれば、プログレッシヴ・ロックとHMの精神が見事に融合・具現化された作品。サウンドはHMのそれだし、複雑に展開していく楽曲は殆どが大作。ドラマ性・美旋律、そして歌メロに徹底的にこだわった結果、へヴィでプログレッシヴでありながらも、聴きやすいという稀有な作品となった。メンバー全員が凄まじい演奏力の持ち主ではあるが、自己満足に陥ることなく、そのテクニックは優れた楽曲を表現するための手法として発揮されている。どの曲もドラマティックな導入部分で聴き手の心を鷲掴みし、抜群の構成力を持って様々なイメージを喚起させながら一気に聴かせてしまう。この構築美にはただただ、溜息が出るばかり。始終緊張感が張り詰めている中にも、フッと息を抜くことが出来る(2)や(7)のような美しい小作品の存在も光っている。

BLIND GUARDIAN 
「Imaginations From The Other Side」

(1)Imaginations From The Other Side
(2)I'm Alive
(3)A Past And Future Secret
(4)The Script For My Requiem
(5)Mordred's Song
(6)Born In A Mourning Hall
(7)Bright Eyes
(8)Another Holy War
(9)And The Story Ends
(10)The Wizard
(11)The Script For My Requiem(Extended Demo Version)
1995年作 Produced by Flemming Rasmussen
from GERMANY
 アンドレアス・マーシャルによるアート・ワーク、アーサー王伝説をはじめとしてファンタジーの世界に深く踏み込んだ歌詞、攻撃的かつ叙情的な楽曲が三位一体となって繰り広げられるドラマティックなパワー・メタルの傑作。ギターのリフがへヴィな大作(1)は遠い彼の地からのイマジネーションの到来である。中世の雰囲気たっぷりのバラッド(3)から、壮大なクワイアを多用したパワー・メタルの名曲(4)、そして激しくも悲哀に満ちたへヴィ・バラッド(5)へと至る構成は完璧で、その後のアルバム全体の流れも実に見事(本編は(1)〜(9))で隙が無い。壮大なクワイアはこのバンドの特徴でもあるが、同じ位に重要な位置を占めているのはまるで“歌う”ように奏でられるアンドレ・オルブリッチの印象的なギター・ワークである。アコースティック・ギターやアイリッシュ・メロディの導入の仕方も素晴らしい。

ANGRA 
「Rebirth」

(1)In Excelsis
(2)Nova Era
(3)Millennium Sun
(4)Acid Rain
(5)Heroes Of Sand
(6)Unoly Wars
(7)Rebirth
(8)Judgement Day
(9)Running Alone
(10)Visons Prelude
(11)Bleeding Heart
2001年作 Produced by Dennis Ward
from Brazil
 ブラジル出身のANGRAは彼等のバック・グラウンドであるクラシックやラテン音楽をHMに導入し、独自のスタイルを確立してきた。新ヴォーカリストとリズム隊を迎えて制作された本作はまさにANGRA流HMの最高傑作で、「欧州風HM+クラシック音楽からの影響+ブラジル的ラテンのグルーヴ感」を極めて高い次元で融合させることに成功している。テクニカルな2本のギターは叙情的旋律を奏で、適度にシンフォニックなオーケストレーションが美しく機能する中、リズム隊とパーカッションが独特のリズムを生みだしている。伸びやかに唄い上げるエドゥ・ファラスキのヴォーカルはアグレッシヴで力強く、そして透明感があり、緻密にアレンジされたドラマティックな楽曲に実に見事に映える。

SENTENCED 
「The Cold White Light」

(1)Konevitsan Kirkonkellot
(2)Cross My Heart And Hope To Die
(3)Brief Is The Light
(4)Neverlasting
(5)Aika Multaa Muistot (Everything Is Gone)
(6)Excuse Me While I Kill Myself
(7)Blood & Tears
(8)You Are The One
(9)Guilt And Regret
(10)No One There
2002年作 Produced by Hiili Hiilesmaa
from FINLAND
 フィンランドの北極圏に近いオウルー出身のHMバンドの7作目。「フィンランドの極端な天候が俺達のやることなすこと総てに影響を与えている。ここでは3つのことしか出来ない。1つ目はテレビを観ること。2つ目は自殺すること、そして3つ目はミュージシャンになることだ。俺達はバンドを組んで自殺することについて歌うことにしたんだ」というサミ・ロパッカ(g)の言葉を私は一生忘れることはないだろう。冷たくて暗いのだけれどアグレッシヴなサウンド、そして悲哀に満ちたメロディは凄まじい扇情力を持って聴き手の感情を揺さぶる。荒涼とした極寒の大地から生み出される、美しくも儚い慟哭の音楽。日本盤にはCDエクストラとして、前作収録の名曲“Killing Me Killing You”のプロモ映像が収録されている。これがまた、寒々しい映像で曲にピッタリ。余談であるがこの中に出てくるわんこが、実にけなげでカワイイ

KAMELOT 
「Karma」

(1)Regalis Apertura
(2)Forever
(3)Wings Of Despairl
(4)The Spell
(5)Don't You Cry
(6)Karma
(7)The Light I Shine On You
(8)Temples Of Gold
(9)Across The Highlands
   Elizabeth
(10)1.Mirror Mirror
(11)2.Requiem For The Innocent
(12)3.Fall From Grace
(13)Future King
2002年作 Produced by Sascha Paeth & Miro
from AMERICA
 アメリカのバンドでありながらも、叙情的な欧州の雰囲気を漂わせるKAMELOTの5th。荘厳なイントロ(1)に続く名曲(2)を聴いてみて欲しい。メロディアス愛好家のハートをガッチリ鷲掴み! 何とも美しく、強烈なギターのメロディではないだろうか。その後のヴァ-ス、そしてサビの部分に至る頃には聴き手は力強く、美しい、そして憂いに満ちたロイ・カーンの歌唱力の素晴らしさに酔いしれるに違いない。その後も劇的で素晴らしい楽曲が目白押しである。効果的に導入されるオーケストラやキーボード、女性ヴォーカル等の繊細なアレンジとアグレッシヴでタイトなバンドの演奏力が絶妙なバランスを保ち、聴き手を深い感動の世界へと誘うのである。気品漂うHMの名盤。

TOPHOME

◆ H o m e ◆