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 そもそも最初は全く興味が無かったSPEED。SPEEDがデヴューした’96年と言えば、私は学生だった。当時バイトをしていたコンビニエンスストアでは有線がBGMだったので彼女達の曲を耳にする機会も結構多かった。しかし、全くと言っていいほどそそられなかったのである。そのうち、雑誌やTVなどでもSPEEDの姿を目にすることにもなったのだがそれでも興味がわくことはなかった。そうしてしばらく時が流れた。
 季節が秋から冬へと向かう、’97年のある日のこと、大変歌メロが素晴らしい曲が有線から流れてきた。特にサビのメロディ展開が秀越で、一聴しただけで私はこの曲の虜となってしまった。しかし、誰の何という曲か分からない。後日、この曲を歌っているのがSPEEDであり、曲名が“White Love”だということを知ったのだが、この時は目から鱗が落ちる思いだった。その後、TVでこの曲のプロモーション・ビデオの一部を見る機会があった。この名曲が綺麗でファンタジックな映像とマッチしていたし、何と言っても4人の姿が強烈に迫ってきた。楽曲の魅力にも4人の魅力にも非常にソソラレたのである。年が明けて、’98年のある日、TVを見ていたら、“my graduation”のCM 映像が飛び込んできた。この曲のサビ・メロに完全にノックアウトされた私はCDがリリースされるや否やCD屋に走ったというのは言うまでもない。そして、予想通り、“my graduation”は名曲だった。SPEEDは私の心をガッチリと掴んでしまった。それ以来、新譜が出るのを楽しみに待ち、過去の作品も入手し、ライヴにも足を運ぶようになった。更にこれは余談だが、学校の教育キャンプでのグループの出し物では仲間と“my graduation”をやった。もちろん、振り付けも再現してだ。




 私の心(というか、耳)を捉えて離さないSPEEDの魅力とは(1)楽曲、(2)ヴォーカル、(3)ライヴ・パフォーマンスの3点に尽きる。(1)〜(3)は優先順位でもある。この並びが替わることは有り得ない。もっとも、これは何もSPEEDに限ったことではない。音楽を聴くうえで最も重要視するのは楽曲。次に演奏力。そしてライヴだ。いくら素晴らしいヴォーカルや演奏を聴かせてくれるアーティストでも曲がつまらなきゃ話になんないのである。逆に言えば、魅力的な楽曲なら、多少ヘタウマなヴォーカルでも聴けてしまうこともあるということだ。ルックスやキャラクター性? 否定はしない。トータル的なルックスも、“魅せる”(特にライヴにおいて)という点では重要だろう。しかし、これも(1)〜(3)があってこそだからねえ。逆は有り得ない。普通、楽曲と演奏力(ヴォーカルも含めて)でそのアーティストを評価している。(好きなアーティストのライヴを必ずしも体験できるとは限らない)
 まず、(1)楽曲について。先にも述べたが、これが最も重要なポイントである。いくらヴォーカルが上手くても、ダンスが上手くても、メンバーのルックスが好みでも曲がつまらなきゃこれほどまでに好きにはならなかったし、すぐに飽きてしまっただろう。SPEEDの場合、何と言っても楽曲が良かった。シングルとして発表した曲に限らず、アルバムの中にも多数の名曲が存在する。3枚のアルバムを聴けば聴くほど、その事実を再確認することができる。伊秩弘将がSPEEDのために提供した曲は激しいダンス・チューンからミディアムなポップ・チューン、バラード、そして大作と多種多様であるが、彼の作る楽曲に共通している点は、“分かり易い”という一言に尽きる。具体的に言えばヴォーカル・メロディの親しみやすさ、キャッチーでありながらドラマ性を含んだ曲展開ということになる。曲によっては語りやセリフを配しているのもポイントが高い。これもSPEEDならでは。“STEADY”における今井絵理子の「そうだよね」や“Wake Me Up!”における島袋寛子の「もう泣かない」、“Too Young”における上原多香子の「愛してる」、他にも“熱帯夜”、“ALIVE”、“Breakin' out to the morning”、“Don't be afraid”、“Precious Time”・・・などでキメゼリフが効果的に使用されている。また、楽曲をまとめ上げたという点では、編曲を手掛けた水島康貴の手腕も見逃せない。SPEEDの代表曲や名曲を何曲か聴けば、そこにアレンジの素晴らしさが光っているのを随所で確認することができる。
  デヴュー作から3rdアルバム『Carry On my way』までを改めて聴いてみると、伊秩弘将はSPEEDのメンバー、特に島袋寛子と今井絵里子のヴォーカリストとしての成長に合わせて曲作りをしていったことが明確である。仮にデヴュー当時に、“Carry On my way”や“Long Way Home”をやったとしても実力がついて行かなかったはずだ。作品を経るごとに楽曲もレヴェルが上がり、彼女達もアーティストとしての可能性を少しづつ広げていくことになった。
 次に(2)ヴォーカルについて。素晴らしい楽曲を表現するヴォーカルがまあヘタウマでもそれなりに聴くことや楽しむことはできる。SPEEDの場合は楽曲の良さに加えてヴォーカルも良い。まあ、改めてデヴュー・アルバムを聴くと「ちょっと無理があるよな」という部分もあるが気になるほどではない。元々歌唱力はあるし、その後の成長振りも著しいことはCDを聴けば一聴瞭然である。ハイトーン・ヴォイスの島袋寛子と抑制がかかったようなヴォイスの今井絵里子というタイプの違う2人が交替でヴォーカルをとり、上原多香子と新垣仁絵がバック・ヴォーカルで参加するというスタイルで楽曲の持っている様々な世界や感情を表現していった。ちなみに、個人的には寛子の声質が好みで、あのヴォーカルが非常にソソラレるのである。
 最後に(3)ライヴ・パフォーマンスについて。普通はCDを聴くことで曲の良さやヴォーカルを含めた演奏力などを確認し、そのアーティストを好きになったり興味を持ったりすることが多い。次第に生のライヴを観てみたくなるってもんである。CDで聴くのにはいいけど、ライヴは醜いというアーティストも実際に存在する。CDはスタジオで作られる作品だから誤魔化しもきくが、中にはライヴでその未熟さを露呈させてしまう場合もある。ライヴではただ単に楽曲を再現するだけでは駄目でプラスαが求められる。魅せるライヴでないと観ている方はちっとも楽しくないのである。セットリストや構成、ステージセット、照明も非常に重要だ。SPEEDのライヴを観て非常に感心したのは魅せるライヴであるということである。あれだけの激しいダンスをこなしながらもきちんと歌いこなしているSPEEDのメンバーも、バックバンドも、照明も音響も、とにかくチーム全体がプロフェッショナルな仕事をしているのである。ライヴの構成やセットリストも文句のつけようがない。観る側としては安心してライヴの空気に身を任せられるし、充分にライヴを堪能することができる。ライヴ未体験の方にはSPEEDのライヴの魅力が凝縮された映像作品『SPEED // TOUR RISE IN TOKYO DOME(DVD)がお薦め。




 リアルタイムでのSPEEDとの付き合いが始まって約1年8ヶ月が経過した’99年10月5日、突然報じられた解散宣言。あの日のことは今でも鮮明に覚えている。その日は昼間学校に行って、夜は夜勤だった。その間一度も帰宅しなかったこともあって、私は一般のニュースとかも知ることが出来ない状態で何も知らないまま夜勤をしていた。当時はドコモの携帯電話がi-modeのサービスを開始して間がない時期だった。私は一緒に仕事していた夜勤のスタッフが携帯電話をi-modeの機種に変えたというので見せてもらっていた。「ホラ、ここでニュースとかも見れるんだよ〜」と言いながら、i-modeを操作する同僚。そして次の瞬間、「エッ!? SPEED解散だって!!」と驚いていた。私は最初状況が飲み込めなかった。「解散? もう? 一体何故?」そんな言葉が頭の中をグルグルと回っていた。正に青天の霹靂というやつだ。しかもよりによってi-modeのサービスで知ることになるとは・・・。 
 解散の理由はメンバーそれぞれの口から語られたが、私はすんなりと納得出来た訳ではなかった。受け入れることが出来たと言うよりもむしろ、諦めに近い。最後の名曲と言われた“April-Theme of “Dear Friends”-を繰り返し繰り返し聴いていた日々・・・。
 解散から3年。期間限定とはいえ、SPEEDが戻って来た。今回の再結成に関しては賛否両論あるが、再び4人一緒の姿を観ることが出来たのは正直嬉しかったし、空白期間を感じさせぬ、むしろ個々の実力がアップしているだけに今まで以上に素晴らしいライヴを体験することが出来た。次もあるのか? あるとしたらいつのことになるのか? 
 新作『BRIDGE』のリリースが待ち遠しい。
2003年11月10日