少人数学級をめぐるこの間の経過
(2005年1月〜12月)
全国で少人数学級を求める声が広がり、都道府県や市町村で独自の少人数学級が実現する中、文科省も少人数指導加配教員を使って少人数学級編成を行える措置を2004年度より実施。
全国45道府県が少人数学級を実施(文部科学省の2005年度調査)。2005年度に新たに実施は、石川、岐阜、佐賀。小1・2で実施の県が多い傾向(41道府県)。県内一律導入でなく、市町村の要望を聞いて実施する県も多い(21県)。
◇ 国民世論に押されて、文科省が少人数学級を検討
2月23日 衆院文部科学委で中山成彬文科相「少人数といいますか、少しずつでもやはりクラスの数を減らす方にいかないとこれはいけない」と国会初の答弁。(石井いく子議員(共産)の質問への答弁)。
3月29日 参院文教科学委で鳥居泰彦中教審会長も30人学級推進の国会初の答弁。(小林みえこ議員(共産)の質問への答弁)
5月10日 中教審義務教育特別部会で委員から少人数学級推進をもとめる意見があいつぐ。
5月19日 文科省「教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議」を設置。少人数学級検討へ。
◇ 政府の圧力に文科省腰砕け 少人数学級実施は見送り
6月1日 経済財政諮問会議に中山文科相、鳥居中教審会長が呼び出され30人学級への非難あいつぐ。鳥居会長は「小1、2は30人学級」を主張。委員からは「一律30人学級という話は、今の時代からするといかがなものか」(麻生太郎総務相)など発言がつづき、中山文科相も少人数がよいと実は思っていないと発言。
6月6日 財政制度等審議会「06年度予算編成の基本方針について」公表。教育について「総人件費抑制の観点から、厳しく見直しを進める」「少人数学級編制等のため教職員を増員することを教育水準の向上と同視するといった安易な発想は排し」と、少人数学級敵視。
6月21日 政府の「骨太方針2005」が「小さな政府」、公務員削減を重点課題に。
8月23日 文科省「協力者会議」が「中間報告」。小学校低学年の35人学級などを推奨しながら、少人数学級制への移行を見送り、学級編成権を区市町村・学校に移す方向を打ち出す。秋に「最終報告」予定。
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■ 教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議・中間報告(要旨)
我が国の教員定数は、未だ世界水準に達している状況にない。30人学級は財政負担の観点から可能性が低い。
【学級編成の改善】
(1)学校や市町村教育委員会の権限と責任を強化する。具体的には▽教員の標準定数算定を都道府県ごとから市町村ごとにする▽一学級40人を上限とするとともに、学校現場の判断で学級編成が弾力的に実施できるよう制度を見直す。
(2)少人数学級を自由に選択できる制度とする。
(3)市町村教育委員会と、教職員の人事・給与負担・定数管理について責任を有する都道府県との密接な連携が必要。
【教職員定数の改善】
生活環境や学習環境が変化する小学校低学年の場合、生活集団と学習集団を一体として少人数化をはかることが効果的と考えられ、35人学級などが可能となる教職員配置とすべき。
【その他】
どのような指導形態・方法が効果的かについて専門的見地から見極めるため、少人数指導、少人数学級に関しデータ収集・分析に努める。
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9月9日 文部科学省は二〇〇六年度概算要求で国としての三十人学級実施予算を盛り込まず、全国から強い要求のあった三十人学級の制度化は先送り確定
9月11日 「郵政民営化」とともに、「小さな政府」「公務員削減」を政策とする小泉自民党が総選挙で圧勝。
10月3日 文科省「協力者会議」が「最終報告」。8月の「中間報告」とほぼ同じ内容。
◇ 義務教育国庫負担金削減をめぐる攻防
10月18日 中教審の義務教育部会が、政府の三位一体改革で取り扱いが焦点となっている義務教育国庫負担金について、制度堅持を明記した答申案を、異例の採決で決定。地方六団体代表委員が会見し、多数決は「数の暴挙」などと中教審を批判。抗議声明を発表。
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◆解説◆ 義務教育国庫負担制度と少人数学級
公立義務教育諸学校の教職員の給与は年間約五兆円。半分を国、半分を都道府県が負担しています。県にすべて負担させると、財政力の弱い県では貧弱な教育となってしまうため、国の二分の一負担となっています。戦後の一時期、全額地方負担としたことで格差が広がり、現在の制度に戻した経過があります。国の負担金は他に流用できません。
小泉首相が支持する、全国知事会など地方六団体案は、(1)国庫負担金を廃止して全額県負担にする、(2)国庫負担廃止で生じる穴は、国民が国におさめている所得税の一部を住民税にきりかえ県の収入にしてうめる(税源移譲)というものです。「三位一体改革」の名で小泉内閣が推進する、国の補助金削減、地方への税源移譲にそったものです。
しかし、この六団体案では、県民所得の低い県は穴がうまりません(高い県は超過)。四十道府県が財源不足となり、もっとも減る高知県では45・8%減の見込みです。
総務省は、この不足分は地方交付税(地方自治体の財源を確保し、財政力の格差を調整するため国税の一定割合を地方に再配分する税金)でうめるから大丈夫と説明しました。
しかし、ここに死角があります。「三位一体改革」の柱として地方交付税総額の縮小が据えられていることです。それをふまえると、次のような事態が想定されます。
A県の場合。三百億円の国庫負担金が廃止となり、税源移譲で二百億円、地方交付税で百億円があてがわれる。ところが、県財政全体では総額千八百億円あった地方交付税が百億円削減となり、深刻な財政難に。一般財源のなかで教職員用としていたお金から二十億円を他にまわし、県独自の少人数学級は中止――。
中教審でも、この点が問題になりましたが、地方六団体代表の三人の委員は「流用しない。信じてほしい」の一点張り。
文科省は一般財源化した教材費等で「流用」がおき、〇三年度では基準額の75・7%にまで落ちこんでいるデータを示しました。自治体関係者の委員は「まわりからこの金を公共事業に回せないのかと言われるが、(使い道が決められた)国庫負担金だから不可能と説明している」と発言。税源移譲されれば、「流用」防止の歯止めがなくなる実情が浮き彫りになりました。
財政力の弱い地方を中心に、教職員の給与負担という義務教育の大黒柱が傾くことが、現実味を帯びはじめています。
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10月25日 中山文科相が閣議後の会見で、義務教育国庫負担金削減をめぐる政府・与党協議について、「どのくらいの地域で、どのくらいの税収不足になるのか、数字をふまえた議論が必要。国民の関心も高いので拙速はいけない」と慎重な姿勢を表明。
10月31日 第三次小泉内閣が発足。文科相に小坂憲次郎氏が就任。
10月26日 中教審総会で、「義務教育改革に関する答申」案を採決し、最終決定。義務教育国庫負担金については、現制度堅持を明記。教職員の人事権を、教育の実施主体である市区町村に委譲する方向で見直すことが適当とし、学級編成についても、現行制度を見直し、学校や市区町村教委の権限と責任を拡大する方向性を打ち出した。
11月2日 義務教育国庫負担制度の廃止と一般財源化を唱える馳浩・元文科政務官が、文科省副大臣に就任。会見でも「議員としては、そう(いう考え)だ」と明言し、持論を基本的に変えず。
11月9日 小坂文科相が、都内で開かれた会合で、義務教育国庫負担金削減問題について「8500億円という(削減額の)数字が(政府から)先に示されており、(文科省としても)消化しなければならない」と発言。会合後、記者団に「前面否定しても話が前に進まない。外堀が埋まってきている」と述べて、削減はやむをえないとの認識を示した。
11月14日 国家公務員の削減目標を決めた経済財政諮問会議が、地方公務員の純減目標の中で、「特に人員の多い教職員については、児童・生徒の減少に伴う自然減を上回る純減を確保するよう検討する」と教職員の削減を強調。
11月20日 財務省の財政制度等審議会部会が「義務教育職員の給与水準を見直し、新たな定数改善計画は策定すべきでない」ということで意見一致。五十年近く続いた定数改善計画をなくす深刻な内容。教育条件をさらに落とすことに照準をあて、「小さな政府」「財政再建」をめざす方針。
10月22日 自民党の中川秀直政調会長が、国と地方の税財政改革(三位一体改革)をめぐる関係4閣僚らとの協議で、公立小中学校の教職員給与の二分の一を国が負担している義務教育費国庫負担金について「06年度は国の負担分が三分の一になる形で決着させる。この三分の一の扱いは07年度以降の第2期で協議をするのが現実的だ」と述べた。
11月29日 政府・与党協議で、安部官房長官が「義務教育国庫負担金の負担率を小中学校をつうじて二分の一から三分の一へ引き下げる」ことを提案、小坂文科相は、これに従う意向を示した。
11月30日 国と地方の税財政を見直す三位一体改革に関して、政府・与党が合意文書発表。国の負担割合を現在の二分の一から三分の一へ引き下げる義務教育費国庫負担金については、「義務教育制度の根幹を維持し、国庫負担制度を堅持する」と明記。ただ、合意文書は、国と地方の連携を深めるため、「義務教育や高等教育のあり方、国、都道府県、市町村の役割について引き続き検討する」とも盛り込んだ。