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猿人の化石と礫石器


 最初の人類についてはまだ明らかになっていないが、生物の遺伝子についての研究およびこれまでに発見されている化石などから判断して、およそ800万〜500万年前にアフリカの類人猿のなかから人類へ進化したものと考えられており、近年も新しい化石の発見がつづいている。
 その詳細については、 人類の誕生のページを参照してください。

 いままでに発見されている猿人の化石は、ほとんどがアフリカの大地溝帯を中心とする東アフリカと南アフリカから発見されているが、一部チャドで見つかっているものがある。なお、アフリカ以外の地域では猿人の化石は発見されていない。


 石器については、これまでに発見されている最も古いものは、約250万年前のものでエチオピアのハダールから発見されている。また、ケニアのツルカナ湖の西部で約230万年前の石器が見つかっている。この最も古い形の石器は、オルドヴァイ渓谷からも発見されていることから「オルドワン石器(オルドヴァイ型石器)」と呼ばれており、東アフリカから見つかっている。約150万年前まで、この形のものが使われていた。
 「オルドワン石器」は、握りやすい河原石(礫)の一端を打ち欠いただけの単純な石器で「礫器(れっき)」「礫石器(れきせっき)」とも呼ばれており、手斧として使われたらしい。礫器をつくる際にはがれた剥片の方も「剥片石器(はくへんせっき)」として動物の解体などに使われたようである。

 ただし、このオルドワン石器を作ったのが本当に猿人(アウストラロピテクス・ボイセイなど)なのか、原人(ホモ・ハビリス)なのか、はっきりしていない。東アフリカからは、両者の化石がともに発見されており、この石器をどちらと関連させて考えるかは非常に難しい問題だからである。



【猿人の主な化石】
 アウストラロピテクスよりも古い化石、及び、アウストラロピテクスの詳細については、 人類の誕生のページを参照してください。

アウストラロピテクス・アファレンシスの化石(華奢型・東アフリカ)
 華奢型で、いまのところ、アウストラロピテクスでは最も古い種である。
 1974年に、エチオピアのアファール地方のハダールで、ドナルド・ジョハンソンによって、約340万年前のものと推定される化石が発見され「ルーシー」という愛称が付けられた。全身骨格の約40%がみつかり、小柄ながらきわめて頑丈な成人女性で、すでにしっかりと直立歩行に適応していた。歯は人類の特徴もいくつかみられるが、類人猿の歯に似た特徴も多く残している。

アウストラロピテクス・アフリカヌスの化石(華奢型・南アフリカ)
 最初の発見は、1924年に、南アフリカのタウング鉱山の爆破作業で発見され、レイモンド・ダートの手に渡った。6才くらいの子供の頭骨で、ダートは「アウストラロピテクス・アフリカヌス」(アフリカの南方のサルの意)と命名して1925年の「ネイチャー」誌に発表されたが、広く認知されるには相当の期間を要した。
 現在の分類でも「アウストラロピテクス・アフリカヌス」である。華奢型のアウストラロピテクスで、南アフリカからしか発見されていない。

アウストラロピテクス・ボイセイの化石(頑丈型・東アフリカ)
 東アフリカのタンザニアのオルドゥヴァイ渓谷で、ルイス・リーキーとメアリー・リーキーによって1959年に発見された。
 当初は、「ジンジャントロプス・ボイセイ」(「ジンジ」は東アフリカの古名、「アントロプス」は人類の意、「ボイセイ」は出資者の名前)と名付けられたが、現在は「アウストラロピテクス・ボイセイ」に分類されている。頑丈型のアウストラロピテクスである。
 この猿人の化石とともに礫石器が発見されたのであるが、その同じ層の下半分からホモ・ハビリスの化石が見つかったことから、発見された礫石器はホモ・ハビリスが使ったものではないかという説もある。その理由は、アウストラロピテクスよりもホモ・ハビリスの方が脳容積が大きくより現代人に近いことと、他の地域では礫石器がホモ・ハビリスの化石とともに出土することが多いからである。

アウストラロピテクス・ロブストスの化石(頑丈型・主に南アフリカ)
 アウストラロピテクス・ボイセイと同様に頑丈型である。南アフリカで発見されることが多いが、一部東アフリカでも見つかっている。



【礫石器】
 礫石器(れきせっき、最初の石器)は、はじめオルドバイ渓谷でアウストラロピテクス・ボイセイの化石とともに発見されたため猿人が使用したものと考えられたが、その下層でホモ・ハビリスの化石も発見されたことから、ホモ・ハビリスが礫石器の使用者ではないかとする説が有力になりつつある。
 発見されている最古の石器は約250万年前のもので、エチオピアのハダールで発見されている。オルドヴァイ渓谷をはじめ東アフリカの各地で発見されており、約150万年前ころまで、この形の石器が使われた。
 下の写真及び説明文章は、創元社「知の再発見双書」の『人類の起源』エルベール・トマ著、河合雅雄監修、からの引用です。




「 190万年前以降の典型的な道具は、ごく簡単な礫石器であった。
 これはふつう片面だけを打ち掻いたもの(写真の下側)で、加工されていない剥片(写真の上側)とともに出土することが多い。
 ホモ=ハビリスがつくったこのタイプの道具は、最初にオルドヴァイで発見されたため、オルドヴァイ型石器と呼ばれている。」

 写真・説明文章とも、創元社「知の再発見双書」の『人類の起源』エルベール・トマ著、河合雅雄監修、からの引用です。



【参考ページ】
人類の誕生





参考文献
「新訂版チャート式シリーズ 新世界史」堀米庸三・前川貞次郎共著、数研出版、1973年
「人類の起源」エルベール・トマ著、南條郁子訳、河合雅雄監修、創元社「知の再発見双書」、1995年
「季刊 考古学 第74号」雄山閣出版、2001年2月、から「旧世界の前期旧石器文化をめぐって」藤本強著
「世界の歴史1 人類の誕生」今西錦司他著、河出文庫、1990年
「イミダス特別編集 人類の起源」馬場悠男監修、高山博責任編集、集英社、1997年
「朝日=タイムズ 世界考古学地図 人類の起源から産業革命まで」クリス・スカー編集、小川英夫・樺山紘一・鈴木公雄・青柳正規日本語版編集参与、朝日新聞社、1991年
LINK 埼玉県立博物館人類博物館 500万年進化の旅世界の人類進化と道具石器の拡散


更新 2003/9/15

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