Prologue 1 


さくらが産まれた時、母乳で育てようと思ってました。
病院も母子同室だったのですぐにおっぱい生活。順調にスタートしたかに見えてました。
看護婦さんにも訪問してくれた助産婦さんにも「良いおっぱいをしている」「出てる」と言われて周りの「ミルクを足した方がいいんじゃない?」という言葉も無視して母乳だけの育児をしていました。

ところが、3ヶ月検診の結果は成長曲線のめいっぱい下。ミルクを足して来月もう一度来るよう指導されてしまいました。その時のショックったら…。
さくら はよく寝る子でした。夜はなかなか寝なくて愚図っていたのですが、今思えばお腹が空いていたのかもしれません。
3ヶ月検診で体重の増加が少ないという事実を突きつけられる前から、もしかしたら…という気持ちはありました。それでも母乳で育てたいという気持ちから、助産婦さんの「出ている」という言葉にしがみついていたのです。母乳は出ている量が目に見えないので、足りているのか?という不安は常にありましが、その度に出てると言われたんだから足りてるんだと打ち消していました。でも、出ていなかったのです。

それから混合の育児が始まりました。なかなか飲みの悪い子で苦労はしましたが、体重は順調に増加し、翌月の検診ではもう大丈夫と言われてほっとしました。
母乳にこだわりたい気持ちはありましたが、足りないなら仕方がないとあきらめ、混合での育児も定着したころ、私が帯状疱疹にかかってしまったのです。

かかったことのある方はご存じだと思いますが、横を人が通るだけでも痛いと感じるくらい、とにかく痛い病気です。
症状が出始めたころはチカチカ痛いな…という程度でしたから、普段通りの生活をしていました。近くの皮膚科を訪ねると帯状疱疹と診断されたものの、子供には移らないと言われ、更に治療には別の総合病院を紹介されました。
数日して総合病院にかかった時信じられない言葉を聞くことになったのです。帯状疱疹は水疱瘡と同じ菌の病気で、かかったことのない人なら水疱瘡が移るのです。5ヶ月のさくらは当然水疱瘡なんてしてません。

更に最悪なことに患部は右の乳房の下から脇にかけてでした。既に感染しているだろうと言われて、先生の前でうるうるしてしまったのを覚えています。体を動かすだけでも悲鳴をあげそうなのに、さくらのおむつ替え、抱っこ、そして授乳をほとんど泣きながら続けていたのに、それがたった5ヶ月の赤ちゃんに水疱瘡を移す結果になってしまいました。

治療のため強い抗生物質を服用することになり、授乳をストップするように言われました。治療には1ヶ月近くかかりました。その間おっぱいはしぼっていたのですが、動くだけでも痛い帯状疱疹の身、しかも患部自体を触ることになるのでとても満足にしぼれない状態が続き、ただでさえ出ていなかった母乳はとうとう出なくなってしまいました。それ以来、私の授乳はさくら5ヶ月でストップしてしまったのです。



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